22日、日本芸術院は、新たな会員の候補者として9名を選出したと発表した.3月1日付で文部科学大臣より正式に発令される.
日本芸術院は「芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関」.定員は120名.現在は、第一部「美術」は、日本画、洋画、彫塑、工芸、書、建築の六つの分科、第二部「文芸」は、小説・戯曲、詩歌、評論・翻訳の三つの分科、第三部「音楽・演劇・舞踊」は、能楽、歌舞伎、文楽、邦楽、洋楽、舞踊、演劇の七つの分科から構成されている.
新会員の選考は、従来は現会員の推薦で決めていたが、今回から外部有識者を含めた候補者推薦委員会を組織し、対象分野を写真・映像、デザイン、マンガ、映画にも拡げ、このうちマンガからちばてつや(83歳)、つげ義春(84歳)の二名が選ばれた.第二部「文芸」に新たに「マンガ」の分科が作られるようだ.マンガの推薦委員には里中満智子、吉村和真らが含まれる.
漫画が日本の芸術の一分科に含まれることになった.公的に認められた意義は大きい.もはやサブカルではないのだ.とはいえ、今さらの感を禁じ得ない.
日本の漫画を文化・芸術たらしめた功労者としては、手塚治虫、白土三平、横山光輝、石森章太郎、水木しげる、さいとう・たかを、藤本弘(藤子・F・不二雄)、赤塚不二夫、さらに水島新司、ジョージ秋山、矢口高雄らの名が挙げられようが、残念ながら全員が故人.もっと早く、彼らが生きているうちに認めるべきであった.日本芸術院は定員が限られており、これらの人を全員会員にするわけにはいかないから、大勢死ぬのを待っていた、と言っては嫌味がきつ過ぎるか.
ちばてつやは最後の大物で、受賞に何の文句もないが、安孫子素雄(藤子不二雄A)がなぜ選に漏れたのか.当然選ばれるべき人物のはず.87歳.次回の選考時にご存命でいる保証はない.失礼ながら、この人を差し置いてつげ義春が選ばれたのは少々納得がいかない.貸本屋時代からの貢献を評価してということであろうか.寡作であるがゆえに神格化され過ぎている気がしなくもない.永井豪(76歳)は順番待ちだろう.*1
この次の世代というと、あだち充(71歳)、吉田秋生(65歳)、江口寿史(65歳)、高橋留美子(64歳)、小林まこと(63歳)、細野不二彦(62歳)、……ということになるが、ここから先は大物が大勢いる.日本芸術院のマンガ分科の枠はせいぜい2~3人といったところだろうから、選考は苦労することになるだろう.