Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

ウィル・スミスのアカデミー賞授賞式でのトラブル

いろいろ面白くない気持ちがあって、何か書こうと思いつつ、筆が進まないでいるうちに、事態はどんどん進み、想像を上回る騒動となっている.

3月27日、アカデミー賞の授賞式で、司会を務めたクリス・ロックが、客席にいたジェイダ・ピンケット・スミス(ウィル・スミスの妻)の頭髪のことを揶揄する発言をした.ジェイダは脱毛症に悩まされていることをInstagramで表明しており、この時はスキンヘッドだった.ジェイダの不愉快な表情を見たウィルはステージに上がるとクリスを平手打ちし、さらに放送禁止用語を口にし、わめいた.テレビ放送はあわてて音声をカットする処置をした.

その後、ウィルはアカデミー賞主演男優賞を受賞しオスカーを手にした.

ウィルは同日夜のパーティーで関係者に謝罪、なお翌日、twitterにて反省の意を表するとともに、クリスに謝罪をした.が、騒ぎは収まらず、関係者は口々にウィルの行為を批判.アカデミー理事会は暴力に対して強い非難の意を表わし、何事もなかったように司会を続けたクリスに感謝した.

クリスは、ウィルを告訴するつもりはないことを表明.

ウィルに対する批判は激しくなる中で、オスカーの返上を求める声もあがった.

4月1日、クリスは、責任を取ってアカデミー(AMPAS)を退会する意向を示し、アカデミーもそれを受理したことを発表.

4月8日、アカデミーは授賞式を始めとするAMPAS主催イベントへの出席を10年間禁止することを決定し、ウィルもこの決定を受け入れたことを発表.併せて、主演男優賞は剥奪しないこと、今後のノミネートについても除外対象にはならないことを発表した.

いろいろ言う人はまだいるだろうが(私もその一人だが)、事件としては一応これで決着がついたことになるのだろう.

私は最初にニュースを聞いた時、ありゃ、これはクリス干されるなー、と思った.だからその後の展開は意外だ.

日本でもそうだが、コメディアンは他人を「いじる」ことで笑いを生み出そうとすることがしばしばある.「いじる」というと聞こえはいいが、いじられる側にとっては傷つくことも少なくない.が、文句を言えば「空気の読めない奴」と言われかねず、そのため傷つかないふりをし、一緒に笑わなければならないという、二重の苦しさを強いられることがある.これは、友人同士の場でも同様のことがしばしば起きる.

そもそも他人の容姿を安易に話題にすることはご法度だ.悪く言うつもりがなくても傷つけることがあり、よほどのことがない限り、容姿について言及すべきではない、する時には慎重に言葉を選んでしなければいけない.ましてからかいのネタにするのは許されることではないはず.これは今では日本でも常識になりつつあるルールだが、もともとはアメリカ発のものだろう.

この時のテレビ中継はネットに転がっているが、英語が得意でない自分には、クリスが実際に何と言い、それはどのようなニュアンスのものであるのか、侮蔑的・差別的表現だと断じてよいのかがわからない.誰か詳しい人に解説してほしいと思うが、世間の話題はウィルの暴力のことばかりで、クリスのしでかしたことについての説明がない.

クリスはウィルを告訴しないという.自分が原因なのだから当たり前のように思われるが、まるでクリスの度量を示しているようなニュアンスで語られるのも気になる.

断わっておくが、私は、ウィルの暴力について、容認するつもりも弁護するつもりもない.ただ、順序として、まずクリスの発言があった.この発言の是非が知りたい.他人の容姿をからかいのネタにすることを、アカデミーは今後も容認するのか.その判断があって初めて、ウィルに対する処分が決められるのではないか.