Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

ジェンダーに配慮した英語表現

女性の警官を含めてpolicemanとする表現は好ましくないからpolice officerとしよう、と主張する人が少なからずいることを、私は中高生の頃に知っていた.40年以上も前だ.女性をpolicemanと呼ぶからおかしいので、男性に限定し、女性警察官はpolicewomanと呼べばいい、という中庸的な説があることも知っていた。学校の教科書にはpolicemanしか出て来ないことも.

「警官=policeman」はよくない、と考えていた人が、実際のところどのくらいいたのかはわからないが、policewomanやpolice officerという言葉は、少なくとも1970年代の後半には既にあったのだ.また、日本の英語初学者にもそのような説明がなされる程度には、普及していたということだ.

私は日本語でも「彼ら」という言葉が好きではなく、「彼ら(彼女らかも知れないが)」のような書き方をしたり、「その人たち」のような言葉を選んだり、自分を納得させる言葉遣いに四苦八苦していた時だったから、この考え方はすんなりと納得できた.

大学生の時、「理論経済学」という科目の教科書がポール・A・サムエルソンの「経済学」だった.ポール・A・サムエルソンはノーベル経済学賞を受賞(1970年)した世界的な学者.この「経済学」という本は世界中で経済学の教科書に使われており、サムエルソンはそのため、常に最新の情報を盛り込もうと、三年の一度の改訂を続けていた.私が利用したのは1981年刊の11版.

訳者の前書きに11版での改訂内容がざっと紹介されているが、その中で、仮にも男女差別を思わせる表現は徹底的に払拭されていると述べている.「policemanをpolice officerと書き換える程度のことではなく、ape-menをape-hominoidsとしたり、Jack-of-all-tradesをJack-and-Jill-of-all-tradesにしたり、paternalisticで十分意味が通じるところをpaternalistic and maternalisticとしたりしている」と例を挙げ、これは「ウーマン・リブ意識の強い次女マーガレットの担当」と決めつけ、日本語訳には反映していないと明言している.訳を担当したの都留重人は、当時の日本を代表する経済学者.当時69歳の都留教授にとって、そんなことはどうでもよかったのだろう.

1985年に、S・ジョンソンの「1分間セールスマン」という本が出版された.まだ学生であったが、ビジネス本に興味を持っていた私は、S・ジョンソンが何冊かの知られたビジネス本を著した人であることを知っていたし、魅惑的なタイトルでもあり、すぐに買い求めた.原題は「The One Minute Sales Person」という.英語では、既にセールス・パーソンと言うのかと驚き、かつ、なぜ日本語で「セールスマン」という語を使ったのかと、イラっとしたことを覚えている.ちなみに内容は、なるほどと思えることも書いてあるのだが、言葉遊びをしているだけで、本質的なことを語っていないようにも感じられた.S・ジョンソンは2000年に「チーズはどこへ消えた?」という本を著した人だといえば、その胡散臭さがご理解いただけると思う.

さて2022年.「中高生の基礎英語 in English」で講師の人たちが聴取者に呼び掛ける時は、Listeners(たまにEveryone)という言葉を使う.「ラジオ英会話」では、大西先生も、秋野ろーざさんも、クリスさんも、大抵 Guys と言う.ちょっと気になる.「ラジオビジネス英語」ではどうだったかと、何日分か聞いてみたのだが、そもそもこの番組では、そのようにフレンドリーに聴取者へ呼び掛けたりはしていないのであった.


JonathanRiederによるPixabayからの画像