7月8日午前11時半、安倍晋三元首相が銃撃された.奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、街頭演説中だった.犯人はその場で現行犯逮捕.安倍元首相は心肺停止で救急搬送されたが、17時50分過ぎに、亡くなったと報じられた.
お昼過ぎに事件を知り、たいそう驚いた.戦前はともかく、戦後に首相経験者が殺されるなど皆無.口で何を言おうが、現実にそのようなことが起きるはずがないと信じていたところへの痛ましい事件.ここ十数年、こんなことがと恥ずかしくなるような、情けなく思うようなことが次々と起き、日本はもう終わりかも知れないと漠然と感じることがあった.が、今回はそんなこととはレベルが違う.大物政治家が、選挙活動中に襲われ、命を奪われたのだ.
私は、政治家としての安倍晋三には強く批判的である.彼のしたこと、しなかったことが白日の下にさらけ出され、その問題点が多くの人に知られ、結果として、選挙で惨敗することによって政治家生命が絶たれる.これが私の望む筋書きであった.人間としての安倍晋三に何も恨みはない.健康で長生きしてくれればいい.このような形で命が奪われることなど、あってはならないことだった.
しかし、話はこれで終わらない.twitterを見ていると、撃たれた直後から、便乗して野党を批判するツイが出てきていた.犯行の動機も目的も背後関係も何もわかっていないのに、自説の主張にこうした事件を引き合いに出すのは卑怯だ.野党を批判したければすればいい.それはこの事件とは関係ないところですべきだ.勝手に結びつけるのは、安倍氏にも失礼だ.
世界中から追悼の意が寄せられ、テレビでも盛んに紹介された.もちろん追悼で悪口を言う人はいない。美点を並べる.それを聞いていると、安倍氏は希代の政治家であったかのような錯覚に陥る.痛ましい事件で亡くなられたのだ.通常ならしばらくはそうした感傷に浸っていてもよいが、問題は二日後に控えた参院選.
票は香典ではない.事件とは関係なく、冷静に投じたいもの.が、自民党が圧勝するかも知れない.そして「このような事件を再び起こさないために」個人の自由を制限する方向に拍車がかかるかも知れない.憲法改正もやむを得ないという方向に世論が傾きかねない.
5年10年経って振り返った時に、この日が歴史のターニングポイントだったということになるかも知れない.だから、この日のことを記録しておく.
とにかく、自分が生きている間に、まさかこんなことが起きるとは.
Hoàng Nguyên LýによるPixabayからの画像