藤井聡太八冠が失冠するかも知れないと話題になっている.
5月26、27日に名人戦の第5局が開催され、藤井は挑戦者の豊島将之九段に勝利.これで4勝1敗、初防衛を果たした.出場したタイトル戦で負けなし.タイトル連続獲得記録は、自身の持つ最多記録を更新して22期.タイトル獲得22期は歴代6位.
タイトル獲得数(歴代順位)
順位 | 棋士 | 登場 | 獲得 | 獲得率 | 対局勝率 |
1 | 羽生善治 | 138 | 99 | 0.717 | 0.621 |
2 | 大山康晴 | 112 | 80 | 0.714 | 0.600 |
3 | 中原誠 | 91 | 64 | 0.703 | 0.596 |
4 | 渡辺明 | 44 | 31 | 0.705 | 0.592 |
5 | 谷川浩司 | 57 | 27 | 0.474 | 0.514 |
6 | 藤井聡太 | 22 | 22 | 1.000 | 0.806 |
7 | 米長邦雄 | 48 | 19 | 0.396 | 0.438 |
これを見れば、いかに藤井がずば抜けているかがわかる.一見、付け入る隙がないように思われるが、現在並行して行われている叡王戦(五番勝負)では挑戦者の伊藤匠に対し1勝2敗と追い込まれている.それで「失冠するかも」と騒がれているのだ.
挑戦者は藤井一人にターゲットを絞れる.一方、藤井は次々に現われる最強の挑戦者を相手にしなければならず、相手を絞ることができない.だから大変だ、という説を目にした.が、それはどうだろう.そこまで単純ではないのではないか.
かつて渡辺明がタイトル戦で藤井に負け続け、自身の持つタイトルを次々に献上していた時期がある.でも渡辺はこの時期に、藤井に対象を絞って研究をしたかというと、それはしなかったそうだ.棋士は常にいろいろな相手と闘わなければならない.対藤井に時間をかけ過ぎると、ほかの対局を落としてしまい、年間の勝率が下がる.それは避けたかった、ということのようだ.
もっとも、タイトルをすべて失ったあと、「これから棋士としてどうするか、考えないといけない。藤井君以外の人になるべく負けないようにするのか、それとも藤井君に絞って徹底的に研究し、一冠でも奪い返す方向でいくのか」とも話していた.藤井聡太に勝てばニュースだから、それ以外の対局を取りこぼしても、藤井対策に時間をかけるのはアリだ.
羽生の全冠は167日(約5ヵ月半)続いた.藤井は既に7ヵ月全冠を保持している.それだけでもすごいことだが、私は以前「10年くらいタイトルを独占し続けるのでは」と書いた.藤井が初めてタイトル戦に負ける日が、早くも今月末に来るのか、それとも10年後になるのか.叡王戦の第4局は31日に行なわれる.