2024年10月28日、漫画家の楳図かずおが胃がんのため逝去.88歳.
代表作といえば「漂流教室」「まことちゃん」になるんだろうな.案の定、流れて来るニュースはこの二作のことばかり.ヒットもしたし、世に影響も与えたけど、「まことちゃん」はもともと「アゲイン」という作品があって、その番外編だったことは触れてもよかった.記事を書いている人は、実は楳図作品をよく知らないのではないか.
1995年以降、漫画の新作は発表していない.若い人は、少なくともリアルでは楳図に接していない.森川ジョージをはじめ、多くの作家が、登場人物が恐怖に震える時に突然楳図漫画の顔にして描く、というパロディは広く定着した感がある.パロディだということがわからず、漫画界のある種のお約束のように捉えている人も多いのかも知れない.それも仕方のないことだ.過去の作品がきちんと(再)評価されるのはこれからだろう.
自分の考える楳図かずおの代表作は「おろち」と「猫目小僧」だ.登場する妖怪はグロテスクだが、人間の心の中にも醜いものがある.それを鋭く描き出している.幼少のみぎり、「猫目小僧」はまだしもユーモラスな側面があるが、「おろち」は本当に怖かった.なにしろ主人公が最後まで正体不明なのだ.怖いけれど何度も読んだ.
「アゲイン」は楳図のギャグのセンスが爆発した作品.絵柄が暗いのに明るいギャグを描くというシュールさが余計におかしみを醸し出していた.が、終盤の展開は驚く.非常にシリアスなヒューマンドラマでもあった.
楳図より年上の漫画家は、わたなべまさこ(95)、針すなお(91)、鈴木伸一(91)、牧美也子(89)、篠原とおる(88)、つのだじろう(88)だけであろか.諸先輩の健康を祈らずにはいられない.
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- 楳図かずおさん死去 88歳 『まことちゃん』“グワシ”は社会現象に(2024-11-05、ORICON NEWS)