Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

スマホが壊れただけなのに

参った.スマホがなければ何もできないことを、ここまで思い知らされるとは.

一昨日の午後は赤坂の病院に予約があり、夕方は逗子で観劇の予定があった.都心は一種のダンジョンだ.JR、私鉄、地下鉄をどのように乗り継いでいけばいいのか.地図と路線図を眺めた結果、青山一丁目から歩いて行くのがよいと判断.終了後の逗子への移動はJRか京浜急行の二択.JRの方が早いが高い.最速移動は六本木から恵比寿に出て湘南新宿ライン.そこまで急がなれば大門に出て浅草線に乗り換えるのがよさそうだ.とんとん拍子に進めば時間の余裕はあるはずで、それなら三田まで歩く選択肢もある.地図アプリでは約40分.自分の足なら恐らく30分.

ということは前日に調べておき、最寄りの駅から乗る電車の時刻を確認.メモに残しておく.

当日は予定通りの電車で出かける.車内でちょっとiPhoneのゲームを.何回かしたらハングしてしまった.ボタンがふたつほど表示されているが、どちらを触っても何も反応しない.こうしたことは必ずしも珍しくはない(このゲームでは初めてだと思うけど).一度アプリを落として再度起動.普通はそれで元に戻る.

けれどもホームボタンを押しても何も反応しない.これでは他のアプリが使えない.iPhone自体の電源を切って再起動しよう.ところが、なんと電源ボタンにも反応せず.これは困った.その場は固まっているように見えても、一分ほど経つと動き始めることがある.自分のiPadでは時折り起きる現象だ.が、10分、20分静観しても何も起きない.しばらく放置すると通常はスリープモードに入るが、画面が多少暗くなるだけで切れない.

このあたりで事態の深刻さに気付き、顔が青くなる.こうなると、当面はこのままの状態で措くしかない.ということはつまり、iPhoneを一切使用することができないということ.

外から電話やLINEが来たらどうなるが試してみたい.家族に頼もうかと思ったが、公衆電話を探すのはともかく、家族の携帯電話も自宅の固定電話もiPhoneを見ないと番号がわからない.

駅から病院までは地図アプリを利用するつもりだったが、それが頼れなくなった.ではどうやって行く? 幸い駅の地図を見ると、外苑東通りをひたすら真直ぐに行けばよさそう.実際に行ってみたらすぐに記憶にある道になり(この病院に行くのは三度目なので)、迷わず着くことが出来た.

病院は思ったより早く終わり、少し時間の余裕がありそうだったので、表参道のアップルストアに寄ってみようかと思ったが、場所がわからないので諦める.

それよりも、今夜の公演場所がわからない.昨年行った時はずいぶん迷った.もっとも、その時は逗子の地理に疎かったためもある.前日、京急逗子駅からの道順は地図で見た.が、JRの逗子駅からは? JRを使ったら行かれない.京浜急行で行こう.さて何線に乗ればいいんだっけ? 路線案内アプリで検索できないのは本当に苛立たしい.見上げると東京タワーが見えた.東京タワーがあるならばその向こうに芝公園がある.芝公園がわかれば三田はすぐ近くのはず.行かれるんじゃないかな、と思い、歩くことにした.

すっかり忘れていたが、都心では、至る所に大きな地図が掲示されている.近年は一顧だにしていなかったが、皆が皆スマホを持っているわけではない.これは大事な社会インフラだ.このおかげで迷わず歩くことができた.三田より大門の方が出やすいため、大門で都営浅草線に乗った.ここまでは順調.

都営浅草線京浜急行に直結しているが、途中、何度か乗り換える必要がある.ホームに入って来たのは特急羽田急行行き.車内の路線図を見て、京急蒲田で乗り換えることを確認.でも蒲田に何時に着くのかがわからない.車内のアナウンスだけが頼りというのはなんと心細いことか.まあいろいろあって、なんとか逗子に到着.会場まで迷うかも知れないことを考えると時間の余裕はない.記憶を頼りに歩き出す.幸い、今回は迷わずたどり着けた.

芝居はまあまあ面白かったし、生の舞台は久しぶり(コロナ以降初めて)で楽しめた.それはいいのだが、実はこのあともうひとつ、大事なミッションを抱えていた.

さる知人がこの劇を見たいと言っていたため、日時を合わせ、終了後に飲みに行く約束をしていた.その知人と実際に会うのは十数年ぶり.見た目がすっかり変わっているかも知れない.わかるかしら.メールアドレスも、携帯の番号もお互いに知っているから、会えなければその場で電話するなりすれば済む話だが、こちらの電話が使えないとなるとそうはいかない.とにかくこちらがわかる場所にいなくてはと、終了後はいち早く会場を出て、ロビーの目立つところに立っていた.

さいわい相手の容姿にさほどの変化はなくすぐにわかった.「あ、どーもお久しぶりですー」と挨拶をすると同時に「会えた……」と安堵し、身体から力が抜けて行った.もしかしたら「今日ちょっと熱が出て(急な仕事が入って)行かれなくなったんですゴメンナサイ」というメールが昼間に入っていたかも知れない.「ちょっと用があって会場を出ちゃったので、駅で待ち合わせませんか? 改札にいます」というテキストメッセージが届いているかも知れない.そうした連絡手段が一切遮断されたのは恐怖だった.

今回は結果的には大きな問題は起きなかったが、それは、電車の乗り換えや病院や会場の位置を前日に確認しておいたことが大きい.よくやった、前の日のオレ.行く途中の電車の中で調べればいいと思っていたら完全に詰んだところ.ついでに、SuicaICカードを利用しており、モバイルSuicaでなかったのも幸いした.おサイフケータイも使っていない.もし使っていたら何処にも行かれなかったところだ.

とはいえ、移動中に聴くつもりだったラジオ講座は全く聴けなかったし、一日一度アクセスすることでポイントのもらえるゲームも、連続記録が途切れた.SNSもできず.天気を確認したくてもできず.気になる言葉があって検索しようと思ってもできない.割と歩いたが何歩ぐらい歩いているのか知りたくてもわからない.誠に不便なことこの上ない.買い物の予定がなくてよかった.主要な店のポイントカードはアプリに移行したから.

それにしても携帯を見ないと誰の連絡先もわからなくなるのは大問題だ.取り急ぎ家族の携帯番号のメモを持ち歩くことにした.

くだんの携帯は、夜半に充電が切れた後、再充電して起動したら通常通りに起動した.ハングしたアプリ以外はバックグラウンドで正常に稼働していたらしく、万歩計もちゃんと歩数を刻んでいた.

そろそろ機種を新しくすべきなのだろう.電子機器の物持ちがよいのは褒められたことではない.財布には痛いけど.


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