Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

can doは苦手

2010年度だったと思うが、この年のNHKラジオ講座「基礎英語3」はとてもいい内容だった.ダイアログの内容もよかったのだが、月ごとに文法の重点学習テーマがあって、例えば今月は現在完了、翌月は関係代名詞、……といった具合だ.当時はそれが当たり前だったから、特別目新しい話ではないのだが.

せっかく聞き始めたものの、仕事が忙しかったりなんだったりで、3~4ヵ月で聞かなくなった.テキストは一年間買い続けたが、その後、処分してしまった.もったいないことをしたと今になっては思うのは、そのような構成のテキストはこれが最後だったからだ.

一年後か、二年後か、再度英語を勉強しようと基礎英語の内容を確認すると、様相が一変していた.テーマが「自己紹介をする」「相手に感謝する」「自分の意見を言う」などとなっていて、助動詞の使い方とか、譲歩表現だとか、そういうものは全くテーマになっていない.この状況は現在も継続されている.

NHKのこの大幅な方針転換は、文部科学省の意向を反映してのことだ.日本人が中学高校で6年間も英語を勉強しているのに、簡単な英会話もできず、苦手意識を持っている人が多いことから、状況に合わせた話ができるような教育に切り替えるべきだと舵を切ったらしい.東京オリンピックの開催や今後のインバウンドの需要増加を見越して、来日した外国人に道を尋ねられても英語で説明できる人材を育成する目的か.

ある程度の基礎が身についていれば、can do方式で話せる言葉を増やしていくのも意味はあろう.だいたい「英語会話」のテキストというのは、そのようにできているのが普通だ.しかし、初学者が多いであろう、基礎を学ぶべき「基礎英語」がcan do方式になるのは賛成しかねる.まずは文法をしっかりと勉強すべきではないか.中学・高校の学校の教科書がどのように作られているのか知らないが、もし同様だとしたら、ちょっと怖いなと思う.

自分は2009年以降は「入門ビジネス英語」を軸に語学学習を続けて来た.が、それなりに真面目に学習しているつもりなのに進歩がなく、もう少し基礎的なところから勉強しようとして「基礎英語」を聴いても、英語会話のミニチュア版のような内容に終始していて基礎を学んでいる実感がない.そんな中、2022年度の「ラジオ英会話」のテキストを見たら、文法中心のカリキュラムになっている.なぜ英会話番組で文法を、と驚くと同時に、自分が期待する講義はこのような内容だと思い、この年は「ラジオ英会話」に絞った.この年は学習したことひとつひとつが実になっている実感があった.実際に進歩があったかどうか、客観的にはわからないけれど.

残念ながら、2023年度の「ラジオ英会話」はcan do方式になってしまった(正確には2022年度の3月から).英会話番組だからそれは自然なのだが、自分は英会話の達人を目指しているわけではないので、自分には合わないなと感じていた.前年度と違い、私生活もいろいろあって、英語学習の時間が取りづらくなっているのは事実だが、英語学習の時間が(正確には「ラジオ英会話」に取り組む時間が)どんどん短くなっていったのは、それだけが理由ではなかった.

来年度はどうするか、ラジオ講座に頼るのはやめて自分で文法書のドリルでも取り組むかななどと考えていた.本日、たまたま書店に行く用事があったため、テキストコーナーを覗いてみたら、来月号のテキストが並んでいた(発売は15日だと思っていた).「ラジオ英会話」を見ると、再び文法中心に戻るようだ.まずは五文型から.それを確認し、すぐにレジへ走った.心機一転、もう一度頑張ろう.

テキスト冒頭の「『ラジオ英会話』を始める前に」という解説の中に、次のような記述がある.

英文法なしで英語を学ぶのは、ガイドなしで山に分け入るようなもの、とても効率的な学習はできません。

I couldn't agree more. その通りだと思う.その結果、基礎英語がcan do中心で英会話が文法中心というのは皮肉なものだ.


Jill WellingtonによるPixabayからの画像

東日本大震災の教訓

当時、勤務先は品川だった.駅からは歩いて20分ほどかかる、便のいい場所とはいえなかったが、きれいなビルだった.大阪に支社があり、大阪から品川まで出張で来ている人がいた.

その日は、ほとんどの人が残業せず早めに帰宅した.自分は山手線が止まっているというニュースを聞いて、早々に帰宅を諦めた.オフィスはトイレもある、暖房も効いている、何よりインターネットが通じている.そのためニュースサイトなどで状況を把握することができたのは大きかった.電話は役に立たなかったが、メールのやり取りが可能なのも大いに助かった.

大阪から出張で来ていた人が、新幹線が止まっていると言って社に戻って来た.結局、この人と二人で泊まり込むことになった.

メシでも買って来ましょう、と近所のコンビニに行って驚いた.弁当やパンはもちろん、カップ麺など、腹の足しになりそうなものが何もない.棚がスッカラカンだったのだ.こんなにガランドウなコンビニは初めてみる.このような事態になったら真っ先に食料を押さえなければいけない.夕方になってのんびりと買い物に行っている時点で遅過ぎるのだ.これはこの時最初に学んだ教訓だ.

翌朝、新幹線が復旧した、というニュースを聞いて、大阪から来ていた人が「帰ります」と言う.「山手線も間もなく復旧する」とも流れてきたため、それでは一緒に出ましょうとオフィスを出て品川駅まで行った.結論を言うと、間もなく復旧するはずの山手線は午後まで復旧が遅れた.駅はものすごい人出で、立錐の余地もないほど.途中、トイレに行きたくなり、せっかく並んだ列を離れてトイレに向かうが、トイレもものすごい列.また売店には凡そ食べるものはなし.お昼過ぎに、大阪から来ていた人から「無事に家に着きました」とメールが届いた.「私はまだ品川駅です」と返信したら驚いていた.こんなことならオフィスにいればよかった.座っていられるし、トイレの心配もない.「間もなく復旧する」を聞いてフライングで出て来たことが仇になった.二番目の教訓は「運転を再開しました」というニュースを聞いてから動くべきだったということ.それでも混雑していて、すぐには乗れなかっただろうが.

待っていて一番辛かったのは、状況がわからないこと.あと一時間で動くとわかっているなら待てる.逆に、あと10時間かかるというならここで待つのは諦める.状況がわからなければ判断のしようがない.当時の自分はガラケーで、収拾できる情報には大きな制約があった.近くにいる人がスマホで検索して、「~なんだって」と喋っている声が最大の情報源という状態.情報収集という点でスマホガラケーでは比較にもならない.これが三番目の教訓で、自分はこれでiPhoneに替えることを決めた.


Rajesh BalouriaによるPixabayからの画像

山本陽子逝去

2024年2月20日、俳優の山本陽子が急性心不全のため逝去.81歳.2月2日に「徹子の部屋」へ高橋英樹とともに出演したのが最後の仕事となった.

山本陽子の出演する作品は一作しか見たことがない.が、その一作が強烈な印象を残している.タイトルも覚えておらず、山本陽子のほかに秋吉久美子が出演していたことくらいしか記憶になく、調べるのは苦労したが、あれこれ検索して「逢えるかも知れない」という作品だと判明した.1976年4月から9月まで26話、毎週土曜日の22時~22時54分まで、フジテレビ系で放映されたもの.原作はジェームス三木.主演は林隆三、ほかに志垣太郎、藤岡琢也大竹まこと、さらに森次晃嗣なども出ていたようだ.

林隆三の演じる紺野史郎と山本陽子の演じる若林那々子は、かつては恋人同士だったが、破局.その後、偶然再会するが.その時、史郎は記憶を失っており、那々子がわからなかった.秋吉久美子の演じた役は名前がわからない.彼女は現在の史郎を慕っており、記憶を取り戻してほしいと願っているが、那々子がかつての恋人だと知ると、記憶が戻ったら那々子への気持ちも戻り、自分は棄てられるのではと葛藤する.結局、史郎は徐々に記憶を取り戻し、那々子を愛するようになる.史郎が記憶を取り戻したことと、本当に愛する人と結ばれたことを見届けた秋吉久美子は泣き崩れる……

秋吉久美子も好きだったから、彼女が振られるのは本当に不憫で、自分でいいなら今すぐ慰めたいと思う一方、山本陽子の美人度というか色気はもの凄いものがあり、かわいいんだけど子どもっぽい秋吉久美子とでは比較にならないなあ、男だったら山本陽子を選ぶだろうなあと思わされた.

女子卓球選手の系譜

卓球の団体戦がオリンピックで採用されたのは2008年.以降の出場選手と成績は次の通り.

2008 北京 福岡春菜(24)(初) 平野早矢香(23)(初) 福原愛(19)(二) 4位入賞
2012 ロンドン 平野早矢香(27)(二) 福原愛(23)(三) 石川佳純(19)(初) 準優勝
2016 リオデジャネイロ 福原愛(27)(四) 石川佳純(23)(二) 伊藤美誠(15)(初) 3位
2020 東京 石川佳純(28)(三) 伊藤美誠(20)(二) 平野美宇(21)(初) 準優勝
2024 パリ 平野美宇(24)(二) 早田ひな(24)(初) 張本美和(16)(初)

※年齢は大会時:平野・早田は現在23歳、張本は15歳

北京の前に大きな世代交代があったが、その後は東京まで、順調にバトンが渡って来たように見える.勢いのある若手、エースを張る中堅、チームをまとめる最年長選手と、良くバランスが取れている.三人のうち二人に五輪の出場経験があるというサイクルもできている.その上、報道などで知る限りでは、平野早矢香福原愛石川佳純キャプテンシーにも優れ、よくチームをまとめていた.

こうしてみると、伊藤美誠はずいぶん若くして代表に食い込んだことがわかる.佐藤瞳や芝田沙季(リオ五輪時は18歳)が出てきてもよかったが、伊藤の力が上回った.この時平野は選に漏れ、ずいぶん悔しい思いをしたというが、年齢を考えれば本来は東京での出場を狙うケース.決して遅くはない.若い伊藤・平野の登場で日本代表のレベルがぐっと上がった印象だ.

2000年生まれにはさらに早田がいる.同年代で切磋琢磨したことが成長の要因のひとつかも知れない.が、限られた椅子を取り合うことでもある.リオの選に漏れた平野はその後覚醒.ハリケーンと呼ばれる活躍で数々の実績を残し、東京オリンピックの代表となる.選に漏れた早田はその後覚醒.ひなドラと呼ばれる必殺技に磨きをかけ、独走でパリ五輪の代表の座を射止めた.

パリの代表選手は、これまでと比べて変化が見られる.

張本が、22歳の長﨑美柚や20歳の木原美悠を飛び越して代表選手となった.これは佐藤、芝田を追い越した伊藤と似た構図.ただし長崎や木原はジュニア時代に世界選手権で優勝した経験があり、伊藤らの世代の次のエース候補として期待されている.それを追い越した張本は、タダモノではない.

三人のうち五輪出場の経験者は平野一人.その平野も団体戦のみ.シングルス・ダブルスの経験はない.実力では歴代最強かも知れないが、経験という点では良く言えばフレッシュ.三人の世界的な実力者が同年代に重なった弊害だろう.

全員が若い.おまけに平野と早田は同い年.この三人を誰がどのようにまとめていくのか、気になるところ.先の世界卓球では伊藤がまるで監督のようにあれこれ指示を出し、SNSでは「伊藤監督」などと呼ばれていた.平野も早田も、伊藤のアドバイスは具体的でとても役に立ったと称賛していたが、腹の中ではどうだったか.強敵を迎えてピンチになり、追い詰められている時に、同級生からあれこれ口を挟まれたら、自分だったら腹が立つ.自分を基準にしてはいけないが.

同年代というのは、うまくまとまっている時は強い.が、ひとたび雰囲気が悪くなると建て直すのが難しい.そういう意味で、年齢の違った人が混ざっていることは重要であると考える.

張本と平野・早田は8歳差.これも気になる.伊藤も石川と8歳差、福原とは12歳差だが、リオの時は年の離れた先輩をものともせず、生意気な発言を繰り返していた.が、福原や石川は笑顔で「頼もしいわぁ」と受け入れる懐の深さがあった.これは性格もあるだろうが、同世代では自分は押しも押されもせぬ第一人者という自信と自覚があったからではないか.同い年に実力者がいると、力が落ちればたちまち取って代わられるというプレッシャーが引退するまで付きまとう.下の者の成長を見守る余裕があるかどうか.

気が早いが、2028年のロサンゼルスはどうなるか.平野も早田もまだ若い.2028年も第一線にいて、当然代表を狙うだろう.伊藤もこのまま終わりということはあるまい.リベンジを考えているだろう.そうすると、伊藤・平野・早田の三人が代表になる可能性もある.実は、この三人で世界を相手に戦う姿を見たいという気持ちもあるのだ.そして、良い方向に化学変化が起きればすごいことになるだろうが…….

椅子は譲ってもらうものではなく、奪い取るもの.長崎、木原の奮起を期待したい.

卓球女子 五輪へ向けて

全日本大会の結果、パリオリンピックのシングルに出場するのは早田と平野の二名がほぼ確実となった.団体戦に出場するもう一人は協会が選出する.1月30日の記事で次のように書いた.

三人目の選手は、協会が選出する.五輪ポイントの三位は伊藤美誠なので、普通に考えたら伊藤だろう.過去の実績も問題なし.一方、張本の急成長には目を瞠らされた.現時点での勢いは張本にある.私は、張本を選ぶ方がいいと思う.若くて怖いもの知らずの選手が混じっていた方が、チームに勢いが出る.8年前の伊藤美誠のように.

果たして張本美和が選ばれた.良い判断だ.発表直後、伊藤が「リザーバーに選ばれても断わる」意味の発言をしたらしい.恐らく「団体戦は張本選手に決まりましたが、今のお気持ちを」と問われて答えたのだろう.五輪に落選した直後の伊藤に訊きに行くとは心ない取材だが、人気選手だから訊かれるのはわかっていたはず.もう少し答えようがあるのでは、とは感じた.

ところで「わしろぐ」を読んでいたら、水谷が伊藤を弁護したらしい.いわく、卓球はケガをほとんどしないから、補欠が試合に出ることはない.リザーバーの役目は練習相手だが、伊藤選手はバックに異質なラバーを使うため、練習パートナーに向かない.伊藤選手が、自分はリザーバーには向いていないと言ったのは、そういう意味だろうと.

なるほど.

自分は別の意味で伊藤はリザーバーには不向きだと考える.リオデジャネイロ(2016年)の団体戦出場選手は福原、石川、伊藤でリザーバーは平野.東京(2021年)の団体戦出場選手は石川、伊藤、平野でリザーバーは早田.リザーバーは次の五輪出場を目指す、五輪出場未経験者の役割だと思える.リザーバーという形で出場選手に帯同し、五輪の雰囲気をつかむ(選手としてではないが、経験を積む)と同時に、自分が出場できないことに悔しさを感じ、次のオリンピックこそはと闘志を燃やす場であってほしい.

SNSでは、東京五輪では早田がリザーバーとして伊藤らのメダル獲得を支えたのだから、今度は伊藤が早田らを支えてほしい、という意見を散見した.リザーバーはそんなカッコいいものではないと思う.選手の荷物持ちだってしなければいけない。金メダリストにそういうことをさせるべきではない.

パリ(2024年)の団体戦出場選手は早田、平野、張本.リザーバーは、ロサンゼルス(2028年)でエースの期待がかかる木原か長崎であってほしい.

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