Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

女子卓球選手の系譜

卓球の団体戦がオリンピックで採用されたのは2008年.以降の出場選手と成績は次の通り.

2008 北京 福岡春菜(24)(初) 平野早矢香(23)(初) 福原愛(19)(二) 4位入賞
2012 ロンドン 平野早矢香(27)(二) 福原愛(23)(三) 石川佳純(19)(初) 準優勝
2016 リオデジャネイロ 福原愛(27)(四) 石川佳純(23)(二) 伊藤美誠(15)(初) 3位
2020 東京 石川佳純(28)(三) 伊藤美誠(20)(二) 平野美宇(21)(初) 準優勝
2024 パリ 平野美宇(24)(二) 早田ひな(24)(初) 張本美和(16)(初)

※年齢は大会時:平野・早田は現在23歳、張本は15歳

北京の前に大きな世代交代があったが、その後は東京まで、順調にバトンが渡って来たように見える.勢いのある若手、エースを張る中堅、チームをまとめる最年長選手と、良くバランスが取れている.三人のうち二人に五輪の出場経験があるというサイクルもできている.その上、報道などで知る限りでは、平野早矢香福原愛石川佳純キャプテンシーにも優れ、よくチームをまとめていた.

こうしてみると、伊藤美誠はずいぶん若くして代表に食い込んだことがわかる.佐藤瞳や芝田沙季(リオ五輪時は18歳)が出てきてもよかったが、伊藤の力が上回った.この時平野は選に漏れ、ずいぶん悔しい思いをしたというが、年齢を考えれば本来は東京での出場を狙うケース.決して遅くはない.若い伊藤・平野の登場で日本代表のレベルがぐっと上がった印象だ.

2000年生まれにはさらに早田がいる.同年代で切磋琢磨したことが成長の要因のひとつかも知れない.が、限られた椅子を取り合うことでもある.リオの選に漏れた平野はその後覚醒.ハリケーンと呼ばれる活躍で数々の実績を残し、東京オリンピックの代表となる.選に漏れた早田はその後覚醒.ひなドラと呼ばれる必殺技に磨きをかけ、独走でパリ五輪の代表の座を射止めた.

パリの代表選手は、これまでと比べて変化が見られる.

張本が、22歳の長﨑美柚や20歳の木原美悠を飛び越して代表選手となった.これは佐藤、芝田を追い越した伊藤と似た構図.ただし長崎や木原はジュニア時代に世界選手権で優勝した経験があり、伊藤らの世代の次のエース候補として期待されている.それを追い越した張本は、タダモノではない.

三人のうち五輪出場の経験者は平野一人.その平野も団体戦のみ.シングルス・ダブルスの経験はない.実力では歴代最強かも知れないが、経験という点では良く言えばフレッシュ.三人の世界的な実力者が同年代に重なった弊害だろう.

全員が若い.おまけに平野と早田は同い年.この三人を誰がどのようにまとめていくのか、気になるところ.先の世界卓球では伊藤がまるで監督のようにあれこれ指示を出し、SNSでは「伊藤監督」などと呼ばれていた.平野も早田も、伊藤のアドバイスは具体的でとても役に立ったと称賛していたが、腹の中ではどうだったか.強敵を迎えてピンチになり、追い詰められている時に、同級生からあれこれ口を挟まれたら、自分だったら腹が立つ.自分を基準にしてはいけないが.

同年代というのは、うまくまとまっている時は強い.が、ひとたび雰囲気が悪くなると建て直すのが難しい.そういう意味で、年齢の違った人が混ざっていることは重要であると考える.

張本と平野・早田は8歳差.これも気になる.伊藤も石川と8歳差、福原とは12歳差だが、リオの時は年の離れた先輩をものともせず、生意気な発言を繰り返していた.が、福原や石川は笑顔で「頼もしいわぁ」と受け入れる懐の深さがあった.これは性格もあるだろうが、同世代では自分は押しも押されもせぬ第一人者という自信と自覚があったからではないか.同い年に実力者がいると、力が落ちればたちまち取って代わられるというプレッシャーが引退するまで付きまとう.下の者の成長を見守る余裕があるかどうか.

気が早いが、2028年のロサンゼルスはどうなるか.平野も早田もまだ若い.2028年も第一線にいて、当然代表を狙うだろう.伊藤もこのまま終わりということはあるまい.リベンジを考えているだろう.そうすると、伊藤・平野・早田の三人が代表になる可能性もある.実は、この三人で世界を相手に戦う姿を見たいという気持ちもあるのだ.そして、良い方向に化学変化が起きればすごいことになるだろうが…….

椅子は譲ってもらうものではなく、奪い取るもの.長崎、木原の奮起を期待したい.