Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

メガネっ子萌え

その女性は、いつも人を睨みつけてくる.眉間に皺を寄せていることも多く、私はいい印象を抱いていなかった.有体に言えば怖かった.ある時、彼女は珍しく眼鏡をかけていたが、その顔はとても柔和で、感じの良いものだった.ちょっと美人だとすら思った.

瞬時に事情を理解した.この人は近眼であるにも関わらず、普段は眼鏡をしていない.だから眉間に皺が寄るし、相手の顔を見ようとすると、睨むような目つきになってしまうのだ.

眼鏡を常用している友人の女性にその話をし、眼鏡を持っているならいつもすればいいのに、と言ったところ、「男子は眼鏡で男前度が三割上がるけど、女子は美人度が三割下がるというからね.私はどのみち、美人ではないから気にしていないけど、普通の女子は気にする」と驚くべき回答を得た.とにかく眼鏡は可愛くないから、目が悪くても無理して我慢する女性が多いそうだ.

当時、漫画やアニメに眼鏡をかけた女性キャラクターが登場すると、その人はたいてい、高慢、口うるさい、独善的といった委員長タイプで、ヒーローの邪魔をするか、不美人、ドジ、頭が悪い、泣き虫といったタイプでヒロインの足を引っ張るものと相場が決まっていた.そして、眼鏡を外したら意外にも美人、という設定もよくあった.ヒロインに眼鏡をかけた人はいなかった.

たとえば1978年から連載開始した小林まことの「1・2の三四郎」では、眼鏡のキャラクターは生徒会長の笠原礼子とおしゃべりな倉持トミ子.ヒロインの北条志乃も、三四郎の姉の幸子も、奈緒子さんも伊呂毛達譜利子も山岸マリ子も、みな眼鏡はかけていない.これは当時の典型的なパターンだ.

ラムちゃん音無響子さん、若松みゆき浅倉南、「さすがの猿飛」の霧賀魔子に「スクラップ学園」のミャアちゃん、ユリア、キャッツ・アイの三姉妹.いずれも眼鏡をかけている人はいない.

こうしたイメージがなぜ定着したのかはわからない.漫画のおかげでイメージが固定化されたのか、もともとこうしたイメージがあって漫画がそれに乗ったのか.しかしネガティブなイメージはいっそう強化されただろう.目が悪いのに眼鏡をしないと、きつい目つきになり、見た目の印象は確実に悪化する.いいことは何もないと思うのだが.

歴史の流れを変えたのは「Dr.スランプ」のアラレちゃん.そして21世紀になり、「メガネっ子」というジャンルは萌え属性として完全に定着した.「はじめの一歩」では間柴久美、板垣菜々子は眼鏡をしていないが、新聞記者の飯村真理、接骨医の山口智子は眼鏡女子だ.いずれも美人の設定.現在では「眼鏡をかけると可愛くなくなる」というイメージは払拭されただろうか.

眼鏡をかけた女性で最も美人だと思うのは、「眼鏡橋華子の見立て」に登場する眼鏡橋華子だ.作者の松本救助も眼鏡女子.眼鏡に対して並々ならぬ愛情と執着があるものと察せられる.