Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

北別府学、杉下茂逝去

大正生まれと昭和生まれ、それぞれ時代を代表する大投手の訃報が立て続けに飛び込んで来た.

北別府学は2023年6月16日逝去.65歳.2020年に「成人T細胞白血病」と診断されたことを公表し、治療を続けて来た.実働19年で213勝141敗5セーブ.最多勝利2回、最優秀防御率1回、最多勝率3回など数多くのタイトルを獲得.

杉下茂は2023年6月12日に肺炎のため逝去.97歳.実働11年で215勝123敗.最多勝利2回、最優秀防御率1回、最多勝率1回、最多奪三振2回など、こちらも短い間に数多くのタイトルを獲得.

北別府の現役時代は自分が野球を好きで試合を熱心に見ていた時期とかぶる.だからいろいろ記憶に残っている.球が特別速いわけではないし、変化球が鋭く曲がるというようでもなかったが、とにかく打てない.打っても内野ゴロか外野フライ.精密機械といわれた制球力のよさのなせる業だ.

全盛期は広島カープの強かった時代でもあり、日本シリーズにもたびたび登場したが、一度も勝てなかった(11戦に登板し0勝5敗).特に記憶に残っているのが1986年の対ライオンズ戦.清原がデビューし山本浩二が引退した年である.第一戦に先発し8回を投げて2点に抑えるも、同点引き分け.第五戦、11回を1点に抑える力投をするが、味方も点を取ってくれなかった(試合は12回に津田がサヨナラヒットを打たれて負けた).

これだけ好投しても勝てないとは、巡り合わせが悪いとしか言いようがない.気の毒にと当時は思ったが、今思えば、日本シリーズに5回も出場し、11試合に投げられたということは、プロ野球選手としては幸せではなかったか.

杉下茂については、さまざまな伝説を聞く.一番面白いと思ったのは、「投手は打たなくてもよい」とは杉下が言い出しっぺだという説.打席に入っても打つ姿勢を見せず、投手は相手を抑えればいい、打つのは仕事じゃないと嘯いていたという.真偽は不明.奇しくも今日、MLBでは、6回を投げて2失点に抑え、6勝目を挙げた投手が、22号本塁打を放ち両リーグトップに立ったというニュースが流れた(もちろん大谷翔平のことだ).

インタビューで現役時代のことを訊かれると、実に昭和な回答をするが、90歳を過ぎてもドラゴンズの臨時コーチを務めており、実際には頭が柔らかく現代野球についても勉強を欠かさなかったのだろう.そもそも90歳でグラウンドで仕事ができる体力に驚く.

ともに殿堂入りを果たした二人の野球人.ご冥福を祈る.