Adminではないけれど [隠居生活編]

主に無職の身辺雑記、たまに若い頃の自慢話。

宇能鴻一郎逝去

2024年8月28日、作家の宇能鴻一郎心不全のため逝去.90歳.

ついに亡くなられたか、というより、まだご存命だったのか、というのが正直なところ.Wikipediaには、1990年代半ば以降佳作化したとある.1985年に川上宗薫が亡くなられたこともあり、漠然と「宇能鴻一郎も亡くなられたのかな」と思っていたのだろう.

この人の著書を購入したことはない.というより、書籍で読んだことはない.が、小学校の高学年から中学生のみぎり、スポーツ新聞や(大人の)男性向け週刊誌、月刊誌には大概この人の作品が掲載されていた.それらを盗み見ては夢中で読んだ記憶がある.自分と同世代の男性に共通する記憶ではないだろうか.女性の一人称で書かれているところがどうにも艶めかしく感じたものだ.高校生ぐらいになると、この程度のライトなポルノには興奮しなくなり、自然と興味を失った.

井上ひさしが「自家製文章読本」で宇能鴻一郎の文章を絶賛していたのが記憶に残っている.どこかの新聞か雑誌に掲載された女性の投書が宇能鴻一郎の文章そっくりで、「この人は宇能の文体を借りて自分の声を発することができた」という意味のことを書いていたはず.

芸術家の仕事のひとつは、庶民に声を与えることなのだ.宇能の文体は、まさしくそういうものだった.