大谷翔平が日本全国の小学校約20,000校にジュニア用のグラブを3つずつ、合計6万個を寄贈するという.昨日、本人のインスタグラムで発表した.
日本では低年齢になるほど野球に興味を持つ人が減っており、このままでは先細りだと数年前から識者が警鐘を鳴らしている.筒香なども日本にいる時は盛んに声を上げていた.大谷のこの行動も、若い人が野球に興味を持つきっかけになれば、という思いからだろうか.だとすると、母校だけに送っても意味がない.それにしても「日本全国すべての小学校」とはスケールが大きい.
3個というのは、右利き用が2個、左利き用が1個ということだそうだ.体育の授業で野球をやる時は学校の用具を使用するが、左利き用のグラブは滅多になく、左利きの人は苦労したと思われる.素晴らしい配慮だ.
実際に子どもがグラブを触ればすぐ汚れるし、壊れもするだろう.それが正しい使い方.大谷もそれを望んでいると思われるが、大人はその「貴重さ」がわかるだけに、児童には触らせず、廊下や校長室に飾るところが出て来るのではないか.まさかメルカリ等で売りさばく人はいないと思うが.
ところで、これだけのグラブを寄贈するとなると、いったいいくらぐらいかかるものか、気になるのが庶民の浅ましさ.そういう興味に触れている報道はいくらもあるが、コスト計算がどれも的外れだ.
ジュニアグラブの相場は4000円~1万円だから、2億4千万~6億円としているもの.あるいは一個2万円として12億円とするもの.開発元のニューバランス社は一般向けのグラブを販売していない.今回のモデルは実際に大谷が使用しているものと同じグラブをジュニア用の大きさにした特別製とのこと.となると一個あたりはもっと高いかも知れないが、そんなことより.
6万個のグラブを小学校に実際に送付する作業は、ニューバランス・ジャパンの人がするのか、別のサービス会社に委託するのかはわからないが、3個ずつ箱に詰め、日本のすべての小学校の正式名称、住所、宛名を調べ、送付伝票を書き、それを箱に貼るというだけでも、気の遠くなるような手間がかかる.その後は宅配業者に依頼することになるのだろう.こうした、発送にかかる事務経費および配達費は相当なものになるはず.
仕事で、なんらかの案内状なり招待状なりの宣伝用郵便物(いわゆるDM)を送ったことは何度もある.送る内容物を制作し印刷する手間と費用、郵送費もさることながら、やっかいなのは、送付リストを作り、その宛先をラベルシールに印刷し、一枚一枚封筒に貼る作業.また、送る内容物を三つに折って封筒に入れる作業だ.前者を貼りッティング、後者を入れッティングなどと呼称していたが、これらは手作業でやるしかない.100件、200件くらいなら耐えられるが、1000件を超すと拷問である.
手間がかかるということは、費用が発生するということ.このスケールだと見当がつかないが、数千万円くらいであろうか? コスト計算をする時には、そうした分もちゃんと考慮してほしい.そうしないと関係者のサービス残業で埋め合わせるしかなくなってしまう.