時間の問題だとは思っていたが、2023年10月11日、藤井聡太が3勝1敗で永瀬拓矢より王座を奪取.これで全冠制覇となった.21歳.
永瀬拓矢は今回の対局に臨み、相当に研究をしてきたようで、緒戦の勝利、第二局は200手を超える混戦.この日も序盤は主導権を握ったが、持ち時間を使い果たして一手60秒になったあと、手痛いミスを犯し、対する藤井は冷静にミスを突いて逆転したとのこと.
本人は「名誉なことだが、自分がそれに見合った力があるかと言うとまだまだだと思う。もっと実力をつけたい」と相変わらず謙虚な姿勢を崩さない.今回の対局は、結果的には勝ったものの苦しい展開だったから、浮かれていられないという思いはあっただろうが.
藤井聡太と大谷翔平は似ている.そのずば抜けた成績もそうだが、謙虚なこと.もっとも、ここで図に乗る性格であれば、このレベルに到達することは不可能だっただろう.高いものを見ているがゆえに現在の自分は足りないところだらけであると認識し、だから努力を怠らない、ということではないか.
両親が目立たない点も似ている.大谷翔平が実家へ仕送りをしようとしたら、両親とも働いていて困っていないからいらないと断わられたという.子育てにお金がかかっているのだから、就職してお金を稼げるようになったら返してもらってもバチは当たらないと思うが、そこでホイホイと金を寄越せという親だったら、大谷翔平は育っていないだろう.
藤井聡太の両親が「我が家の教育法――聡太はなぜ八冠が獲れたのか」といった本でも書けば、ベストセラー間違いなし.恐らくそれを持ちかけている出版社やプロダクションもあるだろうが、今のところ応じている様子はない.そういう企画にホイホイ乗るような親だったら藤井聡太は育っていない、と言いたいが、イチローの父親はホイホイ乗った.藤井君のご両親は、そのような真似はしないでほしいもの.
話を将棋に戻す.これまで全冠制覇を成し遂げたのは升田幸三、大山康晴、羽生善治の三人のみ.藤井聡太は四人目.よく羽生と比較されるが、羽生の七冠は一年限り(正確には167日、約5ヵ月半).大山康晴は、三冠を獲得したあと、新たに王位戦がタイトル戦になると、これを獲得.その四冠を維持したまま、新たに棋聖というタイトルが設けられると、これを獲得して五冠.この状態を5年間維持した.つまり八年間タイトルを独占し続けた.【これは誤り、下記追記参照】
藤井聡太は、今後10年くらいタイトルを独占し続けるのではないか.
タイトル獲得の歩み
数 | タイトル | 獲得日 | 備考 |
一冠 | 棋聖 | 2020年7月16日 | 4連覇中 |
二冠 | 王位 | 2020年8月20日 | 4連覇中 |
三冠 | 叡王 | 2021年9月13日 | 3連覇中 |
四冠 | 竜王 | 2021年11月13日 | 2連覇中 |
五冠 | 王将 | 2022年2月12日 | 2連覇中 |
六冠 | 棋王 | 2023年3月19日 | |
七冠 | 名人 | 2023年6月1日 | |
八冠 | 王座 | 2023年10月11日 |
全冠達成者
三冠 | 1957年7月 | 升田幸三 | 39歳 |
三冠 | 1959年6月 | 大山康晴 | 36歳 |
四冠 | 1960年9月 | 大山康晴 | 37歳 |
五冠 | 1963年2月 | 大山康晴 | 39歳 |
七冠 | 1996年2月 | 羽生善治 | 25歳 |
八冠 | 2023年10月 | 藤井聡太 | 21歳 |